轍鮒之急

マンガ、アニメ、映画、ゲームの感想書き散らし

【6】メイカさんは押しころせない【完結マンガ感想】

こんにちは。キセキです。

 

ポケモンsleepを毎日しっかり続けている上に、ポケモンSVのDLCが目前に迫っているので、流石にポケモンモチベが上がっている今日この頃。対戦動画なんかも久しぶりに見ると面白いなと感じるので、未だにポケモンオタクなんだと再認識させられています。

 

それは置いておいて、完結マンガ感想、第6回目の作品は「メイカさんは押しころせない」です。

 

1. 作品概要

「メイカさんは押しころせない」(全12巻)

作者: 佐藤ショーキ 出版社: 秋田書店 ジャンル: 恋愛, コメディ

あらすじ

完璧メイド・九条メイカは住み込みで働く女子高生。そんなメイカは同級生でご主人の高代晃汰にいつも厳しい。だけどふとした時に、晃汰に対するフシギな気持ちがあふれ出る。

『特別な感情を抱いているとか、そういう邪な気持ちは一切ない!!そう、あくまで私はメイドとして…。あれ!?』

女子高生メイド・メイカと男子高校生・晃汰の押しころせない日常コメディ♡

単行本1巻裏表紙より

週刊少年チャンピオンで連載していた同級生メイドラブコメ。チャンピオンって「バキ」のイメージしかなかったんですが、案外いろんな系統の作品があります。とはいえバトル系が多く、ラブコメの肩身は狭そうです。本誌事情は詳しく知りませんが、その中で3年3ヶ月続いた本作は結構好成績なのでは?と思います。

それでは、感想に入ります。

 

2. 舞台設定

現代日本を舞台とした高校生のラブコメです。内容はギャグが強めであり、現実のネタを取り入れたり、下ネタや一部メタい台詞もあります。

次はメイド設定について一般的に、メイド作品のメイドには2パターンあります。1つは、主人が大きな屋敷に住んでいて、複数のメイドが勤めているパターン。例としては「メイドの岸さん」「ボクんちのメイドさんたち。」とか。

                                            

もう一つは、(両親が不在の)普通の家で主人とメイドが同居するパターン。こちらの例は「君は冥土様。」や「最近雇ったメイドが怪しい」とか。イメージは"メイド服を着た家政婦"です。

                                            

あとはメイド喫茶系もありますが、ここでは置いておきます。両方ともラブコメで用いられる設定ですが、両者の相違点はメインの2人の関係性にあります。主従をしっかりつけるなら前者、ほぼ対等の関係にしたければ後者です。これ以上はまたいつか。

さて、本作のメインの2人は、"(両親が不在の)普通の家で主人とメイドが同居するパターン"です。従って、そこに主従はほぼ発生せず、対等な関係のラブコメが進展します。同居に至った理由も明確にあるので、ストーリー展開上で不可解な設定は特に見当たりませんでした。素晴らしい。

 

3. ストーリー

本作は高校生の高代晃汰と、メイドとして同居する同級生の九条芽衣香がメインの同級生メイドラブコメ。なぜ同居することになったかというと、晃汰の母親(晃汰の幼少期に亡くなっている)に恩義を感じているメイカが、一人暮らしとなった晃汰の世話をすることで恩義を果たそうとしているため。1話(高校1年生の冬)の時点で同居生活がほぼ1年となる2人が、自分の気持ちに気づき恋人になるまでと、恋人になってからの様子が描かれます。内容としては、家や学校での友人を交えた日常や、文化祭などのイベントが2人を中心に繰り広げられ、サブキャラがメインとなる回も何話か存在します。

 

同級生メイドラブコメの本作において、目標は2つ。1つ目は、ラブコメなので両想いになること。そして2つ目は、"メイド"としての立場を捨てることです。

このうち後者はメイド作品の特徴であり、その中でも主従関係があるタイプの強みでもあります。主人とメイドがお互いの立場、体面、家の伝統等に縛られるが、2人の想いでそれを打破するといった、一種のカタルシスを与えてくれる要素です。しかし前項でも述べた通り、本作に主従関係はほぼありません。つまりこの作品での"メイドをやめる"という事象の用法としては、主従関係の作品とは異なります。

ここでの用法は、2人の関係における"枷"を外すことです。常識的に考えて、付き合ってる高校生の男女が2人屋根の下で四六時中過ごすなんて、何か縛りがないとエロマンガになって終わりです。そのため、2人が下手なことをしないように"メイド"が枷の役割を果たしています。実際の展開では8巻で付き合うので、その後の生活で一線を弁えさせるために、メイドが利用されます。ヒロインのメイカがメイドである限りはイチャイチャしない、といった具合。従って、メイドという立場を捨てるとき、2人は純粋な恋人関係になることができ、性の要素が解放されるため作品としては区切りになります

 

長々と述べてきましたが、要するに作品のゴールが"両想いになる"→"メイドをやめて、純粋な恋人関係になる"の2段構えになっているということです。実際のところ、前半に比べると後半のストーリーはあってないようなものですが、最終的にどのような関係になりたいかが明確なので、ストーリー展開で不満を感じるところはありませんでした。登場人物の心情もかなり分かりやすいので、引っかかるところもほぼなかったと思います。まとめると、作品全体のゴールが前半後半ともに分かりやすくストーリー展開や心情描写も真っ直ぐなので、ブコメとしてかなり読みやすい作品だという印象です。

 

個々のエピソードについてですが、大まかに①晃汰とメイカの2人の回②晃汰もしくはメイカどちらかの心情がメインの回③サブキャラがメインの回にわかれています。登場人物の思考破綻はないし、妥当な展開で進むことが多いので、違和感はあまり感じませんが、一つ一つのエピソードのクオリティは正直そこまで高くありません。基本的にはギャグ調であり、どのキャラクターも味付けが濃いめなので、質がごまかせているのだと思います。

個人的に流石にそれは無理矢理がすぎるだろと感じたのは、同級生のギャル・津田沼麻美が、晃汰が自分に告白してきたと勘違いするシーン(#37 晃汰くんと津田沼さん)。晃汰が抱えていた段ボールに入っているものの頭文字から告白を連想する思考は、未だに納得できていません。しかし、津田沼さんは最終的に非常に良いキャラクターになったので、ここでの登場は正解だったと思います。

問題のシーン

好きな回は、イカが晃汰への気持ちを母に素直に認める回(#21 メイカさんとホントの気持ち)と、イカの友人である岡さんが晃汰にアドバイスをする回(#39 岡さんとやきもき)。メイカは晃汰が好きだという気持ちをなかなか認めない、晃汰は草食系でやや鈍感な優男という設定なので、割と序盤で2人が自分の気持ちに向き合える展開を持ってきたのが評価点。また両方とも、周囲のキャラクターを上手に使っているのも気に入っている点です。キャラを腐らせる作品なんて数多あるのでね。

 

最後に作品の終わり方ですが、上で述べた2つのゴールを描き切っており概ね満足のいく形。また2人以外のキャラクターも気持ちや思いの振り返りや整理をしており、そういう意味でも丁寧に描いています。最終話は2年後の皆の様子です。

 

以上、ストーリーをまとめると、付き合ってからのゴールもしっかり設定していることで作品を迷子にしておらず展開や描写を丁寧かつ明快に描いている読みやすい作品でした。キャラクターやギャグで誤魔化している部分はあるものの、一人一人のキャラクターをしっかり活かした展開を構築している点も素晴らしいところです。

 

4. キャラクター

主要なキャラクターは、晃汰、メイカと2人のクラスメイトたち。クラスメイトに関しては簡単に紹介します。

高代晃汰

主人公。小学生の時に母親を亡くしており父子家庭だが、父親が海外出張となり一人暮らしすることになったところ、小学生の頃の縁でメイカがメイドとしてやってきた。顔は普通で、スポーツや勉強に特に秀でているわけではない平凡な男子高校生です。

そう、本当に普通の男子高校生であり、適度にアホでエッチなことも気になるし、草食系ではあるが極度な鈍感でもない優男です。特段モテる訳でもありません。ラブコメにおけるキャラクターは何かと変な属性を付与されがちですが、これほどまでに良い意味で特徴がない主人公もいません。せいぜいメイカにうなじやうがいを見せてくれと言ったり、顔芸したり、女装したりするくらい。メイカのほうがややオーバーな性格をしているので、バランスがとれていると思います。

 

九条芽衣

ヒロイン。晃汰の母親に幼少期にお世話になった経緯があり、一人暮らしになる晃汰の家にメイドとして居候する女子高校生。家の中では基本メイド服を着ています。性格的にはかなりのムッツリで、晃汰が暴走しないようにと言い訳していますが、しばしば妄想により大変なことになってしまいます。ムッツリな女の子をヒロインに据えた健全なラブコメは割と希少ですが、結構良いと感じました。一歩踏み間違えると青年誌になりかねない綱渡り感が好きなのかもしれない。キャラクターとしては基本的に常識人で、ツッコミ役になることも多いので、そういう意味でも好きなキャラです。可愛すぎないこともありヒロインとしての評価はそこそこですが、 "晃汰のヒロイン"役を全うしているという意味でキャラの評価はかなり高いです。

 

岡都子

イカの良き友人キャラ。バスケ部で乳がでかい。イカの気持ちの聞き役や晃汰への助言をこなし、メイン2人の恋愛を次のフェーズに進めてくれた本作の立役者。本人はあまり首を突っ込まないようにしていましたが、彼女の言葉がなかったら展開がかなり遅くなっていたと思います。

ルーシー・グランベリー

留学生の女の子。金髪で乳がでかい (2人目)。日本のオタク文化が好きで留学に来たという設定で、基本的には片言で喋ります。実は本作の下ネタ部分の片棒を担がされているキャラで、岡都子の強火担だったりします。核心的な場面で流暢な日本語を話すというのが、このキャラの中でかなり好きな要素です。

 

津田沼麻美

ギャル。乳がでかい (3人目)。文化祭で晃汰に告白されたと勘違いして、負けヒロインの道に進んでしまいました。ギャルですが結構純愛派キャラで、晃汰とメイカの関係を知ってからは横恋慕はせず遠目に片思いをし続けます。この作品で一番好みのキャラです。文化祭以降にいろいろな表情が描かれ、クールな印象を見せつつ、よく赤面するなどギャップがある点が特に好き。

 

妙蓮寺みより、咲良悠

お嬢様 (右) と彼女の家で働く幼馴染のメイド(男) (中央)。彼女達は晃汰とメイカの関係とは違い、ちゃんとした主従関係にあります。すなわち最初の方で述べた"マンガにおけるメイド"の、主人が大きな屋敷に住んでいて、複数のメイドが勤めているパターンに相当します。終盤でみよりと咲良の恋愛模様にもスポットライトが当たりますが、この2人は晃汰とメイカに対して同じ立ち位置かつ晃汰達よりも大きな壁があります。そのためこの2人が主従関係を乗り越えて恋人になることで、メインの2人も関係性を見つめ直すことができました。メインキャラに良い影響を与えるように設計されているサブキャラという意味で、評価は高いキャラクターです。あとは、みよりがインターネットのお嬢様キャラを地で行くタイプなので、単純に面白いです。

ちなみに画像の一番左は妙蓮寺家の会社の社員のおじさんです。

 

他にも晃汰やメイカの友人のクラスメイト、メイカの母、妹など、キャラクターは多め。キャラ全体の特徴で言えば、男女ともに可愛すぎる、格好よすぎる人はほぼいないこと。特に男子で言うと、イケメンは誰一人出てきません。ある意味現実に即してますが、マンガくらいは可愛い、格好いいキャラを見たい人にはあまり刺さらないかも。

 

5. 独自性

作風としてはラブコメのストーリー主軸で、ギャグ要素多め。メタっぽい発言もちょいちょいあります。ラブコメとしては概ね晃汰とメイカ2人がメインで、ハーレムタイプではありません。これだけ見ると、以前紹介した「かぐや様」にさえ近い気がします。

この作品の大きな特徴は、やはり"メイド"です。また学校が2つ目の舞台となるため、同級生というのも大事な点。上でも何作か挙げましたが、メイド作品自体はかなりありふれたジャンルになりつつあるものの、同級生かつメイドをヒロインに据えた作品はまだそこまで多くないと思います。同級生メイドラブコメだと「俺んちのメイドさん」とか「会長はメイド様!」でしょうか。読んだことはないので明確な違いは言及できませんが、前者は4コマ日常系、後者は少女漫画なのでだいぶ毛色は違いそうです。

        

 

6. 絵柄

絵は上手で、女の子は可愛く描いています。しかしながら、現代ラブコメにおいては、中の中といったところ。また、顔芸が多かったり、男は基本的にブサイク寄りに描いている節があるので、そこが肌に合わないと結構苦手かも。絵で低評価することはないけど特段評価すべきところもないかな、というのが正直な感想です。

 

7.まとめ

同級生のメイドと2人で同居するという、とんでもシチュエーションを(ほぼ)健全に描ききった「メイカさんは押しころせない」。ゴールを見失わずマンネリのないストーリーや、周囲のキャラクターを上手に活かした展開明快な心理描写など、ラブコメとしてのポテンシャルは高めな作品でした。ギャグ、下ネタ、ちょっとしたメタ要素が許せる人は是非手に取ってみてください。

 

ところで改めて数えると、私の本棚にはメイド系の作品が10以上ありました。結構メイドが好きだということを再認識。執事やボディーガード系も好きなので、おそらく主従関係でのラブコメが好きなんだと思います。この辺の作品もまた紹介できればしたいですね。

 

それでは。