轍鮒之急

マンガ、アニメ、映画、ゲームの感想書き散らし

【1】かぐや様は告らせたい

こんにちは。キセキです。

 

完結済みマンガ感想記録 第1回目の作品は「かぐや様は告らせたい」です。

 

1. 作品概要

かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~」(全28巻)

作者: 赤坂アカ 出版社: 集英社 ジャンル: 恋愛, コメディ

 

あらすじ

家柄も人柄も良し!!将来を期待された秀才が集う秀知院学園!!その生徒会で出会った、副会長・四宮かぐやと会長・白銀御行は互いに惹かれているはずだったが...何もないまま半年が経過!!プライドが高く素直になれない2人は、面倒臭いことに、"如何に相手に告白させるか"ばかりを考えるようになってしまった!?恋愛は成就するまでが楽しい!!新感覚"頭脳戦"ラブコメ!!

単行本"あらすじ"より

アニメ化、実写映画化までされた人気ラブコメです。アニソン界の大型新人が主題歌を担当したことでも有名です。私はアニメ2期の途中まで観ましたが、概ね原作マンガをそのままやってくれていたので、結構好きでした。声優もイメージに合っていて評価は高いです。

 

2. 舞台設定

作品世界は現代日本であり、技術レベルはそのままです。ただし、日本社会を四宮グループという一大財閥が牛耳っている、という設定があります。これは「竹取物語が史実だったかもしれない」というif設定から、9世紀頃から歴史が分岐しているらしいです。(単行本4巻より)

物語の舞台となる秀知院学園は、家柄が良い高校生達が集うという特徴があります。社長令嬢や病院の院長の孫、暴力団組長の娘、果てはどこかの国の王子まで。(家柄とは?) 

ストーリーの項目でも述べますが、主題は学生同士の恋愛の駆け引き、副題は子供が権力とどう対峙するかです。これを踏まえると、適度に頭が良く、とはいってもまだ子供である高校生を登場人物に据え、少し特殊な環境の秀知院学園を舞台とすることは明確な合理性があると感じました。

また、あくまでも現代日本が舞台なので特殊能力とかは出てきません。安心ですね。お金があればできそうなことは割となんでもやっていますが。

 

3. ストーリー

主題は上記にもあるように、少し頭の良い高校生同士の恋愛の駆け引きです。あれこれ理屈をこねて相手の思考、行動を読んでどう立ち回るか?のバトルが繰り広げられます。このテーマのゴールは、「四宮かぐやと白銀御行の2人が付き合うこと」。分かりやすいですね。ラブコメのゴールは大体これだと思います。

もう一つのテーマは、子供が権力に対してどう立ち向かっていくか。このゴールは「四宮かぐやを理不尽な社会から解放すること」であり、そのために白銀御行を代表とする友人達が権力と闘う姿が描かれます。

 

この作品はこの二つのゴールが相互に関わっています。最終的には2つ目のゴールが達成されないと、本当の意味で「2人が付き合うこと」は達成されない。展開的にもここは意識されていたと思います。付き合ってめでたしめでたし、では終わらないという点で、ラブ"コメディ"であったと感じました。

個別エピソードは、キャラクターの成長を描くもの、恋愛頭脳戦をするもの、高校生の適度な頭の悪さを描くものなど様々です。ただ一貫して作者の「人間の思考への解像度」が非常に高く、納得感、満足感は強め。あとはキャラクター同士の掛け合いが面白かったです。特に好きな回はかぐやが倒れて病院にかかる回 (8巻 第79話 かぐや様は診られたい) です。早坂が可愛い。

終わり方は、とっても満足感のあるものでした。特に各主要キャラクターについて一話ずつ描いてもらえた点は、彼/彼女はどうなったのか?という消化不良がなく非常にすっきりしました。四条姉弟は幸せになってくれ。

 

ゴールが明確に意識されていたストーリー個別エピソードの完成度の高さ読後の万足感と総じて高いクオリティの作品だったと改めて感じました。流石赤坂アカ先生ですね。

 

4. キャラクター

主要キャラについて、簡単に触れます。

本作品のキャラは基本的に頭が良く、感情で行動することがあまりないので、個人的には安心して見ていられました。(以下、キャライラストはアニメのものです。)

 

四宮かぐや

本作の主人公の一人で生徒会副会長。前項で述べた2つのテーマは、天才である彼女が如何に彼女なりの"普通"を勝ち取っていくか、とも言えます。狡猾でありながらも、時々垣間見える人間らしさにギャップを感じること多数。

 

白銀御行

本作のもう一人の主人公で生徒会長。学業成績で唯一かぐやに勝てる男。でもかっこよさに全振りという訳ではなく、適度にダサい。男子高校生の思考の代弁者なので共感したことは多々ありますが、彼のような黒歴史を生み出したことは流石にありません。

 

藤原千花

本作のヒロインで生徒会書記。とても愛らしいルックスと言動の突拍子のなさにより、作品のコメディの大半を担っています。ラブコメの"ラブ"の部分にほとんど絡んできません。(というか絡ませてもらえない。) 好きか嫌いかで言うと、ちょっと嫌い寄りの好き。

 

石上優

本作の裏主人公。(初出3巻) 生徒会会計で、別名「正論で殴るDV男」。彼の成長は作品のサブテーマにも関わってきます。石上はちゃんとオタクなので白銀以上に共感できることは多かったし、他キャラとの掛け合いが1番面白いのでかなり好きなキャラです。ちなみに僕は石×ミコ派です。

 

伊井野ミコ

本作の裏ヒロイン。(初出7巻) 途中から生徒会に加入する会計監査。彼女の成長もまた作品のサブテーマと関係します。他のキャラに振り回されがちですが、終盤はなかなかに狡猾で恋愛頭脳戦を引っ張っていました。ちなみに僕は石×ミコ派です。(2回目)

 

早坂愛

かぐや専属のメイド。上5人とは異なり生徒会役員ではありませんが、彼女がメインのエピソードもあります。クールなキャラでありつつも、多くの可愛いところをみせてくれるギャップがたまりません。この作品で1番好きなキャラクターです。

 

その他のキャラもそうですが、この作品のキャラクターは個性が強いものの、等身大の高校生であることが感じられます。どこかに親近感を感じると、その人を嫌いになれないのは人間の常。キャラクター造形が非常に上手だと思いました。

イラスト引用元: 

CHARACTER|TVアニメ「かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-」公式サイト

5. 独自性

この作品のラブコメとしての独自性は、なんといっても「ガチの恋愛の駆け引きをすること」にあります。ラブコメ作品は世にごまんと存在しますが、ここまで駆け引きをまじめに描いた作品は見たことはありません。(知らないだけであれば申し訳ない。)

普通のラブコメの駆け引きは、せいぜい横恋慕キャラを1, 2話登場させる、くらいのものです。主人公の2人が恋愛にアクティブだからこそ起こる駆け引きと、周囲の人間達の引っかき回し。やはりこの作品の魅力はここにあるのだと思います。

 

6. 絵柄

私がこれまで読んできた他の作品と比較すると、正直絵が上手とはあまり言えません。それでも話の面白さがずば抜けているので、あまり気にならないのも事実です。これは完全に推測ですが、作者は絵を描くのにかなりエネルギーを消費するタイプだと思います。「【推しの子】」が原作と作画を分けているのも、そういうところがあるのでは。

 

7. まとめ

最近のラブコメ作品の中では群を抜いて面白いと感じた「かぐや様は告らせたい」。その源は、優れたストーリー性キャラクターとそれぞれのエピソードの面白さガチの駆け引きが見られる独自性、にあると感じました。総じて非常に完成度の高い作品であったと思います。

作品の感想としては以上です。

スピンオフの「かぐや様を語りたい」や「かぐや様は告らせたい 同人版」もそのうち読みたいなと思っています。

 

それでは。