轍鮒之急

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【3】お近づきになりたい宮膳さん【完結マンガ感想】

こんにちは。キセキです。

 

完結マンガ感想、第3回目は「お近づきになりたい宮膳さん」です。

1. 作品概要

「お近づきになりたい宮膳さん」(全4巻)

作者: 秋タカ 出版社: スクエア・エニックス ジャンル: 恋愛, コメディ

あらすじ

清楚なお嬢様宮膳さんと、元やんちゃでぶっきらぼうな松林くん。高校生活初日、席が近くなったことをきっかけに楽しくお話したい…と思うけど、育ってきた環境が違うからなんとなくうまくおしゃべりできない...!それでもちょっとずつ、二人ともがんばって話せることも増えていくのですが、楽しくお話するだけで、どうしてこんなに赤面しちゃってるんだろう!?

だんだんお近づきになっていく二人をずっと眺めていたいラブコメ第1巻。

単行本1巻裏表紙より

 

「恨み来、恋、恨み恋。」、「六畳一間の魔女ライフ」の作者である秋タカの正統派ラブコメ。全4巻と読みやすい点は良いです。それでは感想に入ります。

 

2. 舞台設定

高校生が主人公のよくあるラブコメなので、舞台は現代日本。お嬢様学校とかヤンキー中学は存在しますが、そのくらいは現実にもありそうなのでギリ許容ライン内。実は過激寄りなヤンキー校はファンタジーだと思っている節がありますが、現実にも割と存在するのでは、と最近思い直しています。

設定部分における作品への入りやすさは高いです。

 

3. ストーリー

ストーリーは"あらすじ"どおりで、高校生初日に席が近くなった宮膳桜と松林颯太の主人公2人がいろんなコミュニケーションをとりながら、仲良くなっていくお話。最終的にはタイトル通り、「2人が付き合ってさらに距離が縮む」ところがゴールになります。2人がなぜ近づきたいと思っているのか、という点にはしっかり理由があります。

全ての話で一貫して、ゴールに向けて2人の距離が縮んでいく過程が描かれます。これは読者が物語の目的を常に明確に捉えることができるため、読みやすさに繋がっていたと感じました。逆に言うと、勘違いや修羅場などで距離が離れる回だとか、サブキャラがメインの回はないので、ラブコメにそういう要素を求めている読者層には受けないと思います。ここは好みの問題ですが、個人的には不必要な障害や回り道はくどいと感じるので直線的に話が進んだ方が良いと思っています。なのでこの作品自体も評価は高いです。

個別のエピソードは、上記の通り2人の距離が縮む回と若干の過去回のほぼ二種類で構成されています。エピソードは概ね学校で繰り広げられるので、ややマンネリを感じる場合もあるかもしれませんが、全体の話数自体がそこまで多くないのでそんなに気になりませんでした。

終わり方は、上記で述べたゴールをしっかり押さえたもの。付き合った上でさらに距離が縮まるところまで描いてくれるので、満足度はとても高いです。正直2人のその後を一生見ていたいですが。1番好きなのはやはり告白回 (3巻 第44話 夏休み 後編) です。やはり告白は曖昧にしないに限りますね。しばしば見られる、好きとだけ言って付き合ってない、とかいう露骨な引き延ばしはやめてほしい。

まとめると、明快かつ簡潔なストーリー構成のためとても分かりやすい物語な一方で、寄り道がまったくないので物足りないと感じる場合もあるという印象です。

 

4. キャラクター

メインの2人を紹介します。2人ともとても良い子なので、安心して見ることができました。

 

宮膳桜

お嬢様中学から入学してきた高校一年生の女の子。舞台が進学校中高一貫校の高等部なので、多分そこそこ頭は良い。しっかりしている性格ですが、不器用な一面もあり可愛い。松林くんと仲良くなるために彼の趣味の話を振ろうとしています。可愛い。敬語キャラというか丁寧な言葉遣いができる人が好きなんですよね。そういうことを気づかせてくれたキャラでもあります。

 

松林颯太

ヤンキー中学から入学してきた高校一年生の金髪の男の子。勉強は舞台の中高一貫校の中等部に通っていた幼馴染に教わったようです。元々の性格的にヤンキーが向いていた訳ではなく、環境的にそうなったタイプ。ただ、趣味は極道映画です。普通に真面目な子なので好感度は高め。宮膳さんに近づかれて照れたりするので彼もまた可愛いです。

 

上記の2人以外では、宮膳さんの友人である戸田綾子、松林くんの幼馴染である白杉政貴が準レギュラーなくらいなので、登場人物自体が少なめ。ここにも、ストーリーの主題である"2人の距離が縮むこと"に対して、本当に必要な舞台装置以外は極力省く姿勢が窺えます。ちなみに個人的には、宮膳さんの中学時代の友人である縦ロールのお嬢様 (桔梗谷京香) が好きです。可愛いので。

 

5. 独自性

キャラの属性で言うと、(元)ヤンキー×お嬢様。少女マンガとかでありそうですね。私自身はヤンキーものの作品をほとんど読まないので、具体的な作品は思いつきません。2人の雰囲気だけで言うと"かなりマイルドにした「薫る花は凛と咲く」"とかでしょうか。(読んでない) 

作品のタイプで言えば、2人の関係性を見守るやつ。「からかい上手の高木さん」とか「好きな子がめがねを忘れた」のやつです。これらとの違いは、2人の心の声が見える点。例に挙げた作品は、片方の主人公の心情だけを見せることで感情移入やツッコミを促していますが、「宮膳さん」では両者の心情が見えるので完全に第三者視点で見守ることになります。また高校生かつ素直な性格なので、あそこまでモダモダもしません。

ブコメとしては、ありふれた作品の一つだと思います。強烈な個性はありません。"2人を見守る系"ラブコメでそれなりのスピード感がある、というのがこの作品です。

 

6. 絵柄

好きです。キャラのデフォルメバージョンとかが結構好み。

細かい部分の描き込みとかはあまりしていない印象です。個人的には、描き込みも度を過ぎると画面がうるさく感じてしまうので、このくらいがちょうど良いと思います。

 

7.まとめ

とてもシンプルな作品である「お近づきになりたい宮膳さん」。主題である"2人の関係性が進む様子"分かりやすくまっすぐに描いており、王道ラブコメとして模範的な作品でした。他のラブコメ作品は、ここから如何に味つけをするかが求められていると感じます。

 

それでは。